2007年5月7日月曜日

バイオ燃料 掛け声先行で戦略は不透明

 地球温暖化対策の一環として期待されている「バイオガソリン」の試験販売が首都圏で始まった。  サトウキビやトウモロコシなどの植物から造るバイオエタノールは、有力なガソリン代替燃料としてブラジルや欧米などで実用化している。日本でもようやく普及への一歩となった。  今回のバイオガソリン導入は石油元売り各社が進めた。

バイオエタノールから化学的に合成した燃料「ETBE」をフランスから輸入し、これを通常のガソリンに7%混ぜる。

給油所を順次拡大し、二〇一〇年度に全国へ広げる計画という。  

普及のかぎの一つは販売価格だが、当面、コスト高の分は石油連盟と経済産業省が負担することでクリアした。しかし補助期間は二年と限られ、それ以降は不透明といわねばならない。

 そもそもバイオ燃料の原料をどう確保するか。国産バイオエタノールの生産は年三十キロリットルに過ぎない現状で、輸入はやむを得ないとはいえ、そればかりに頼ってもいられない。安定供給が大きな課題であり、価格の見通しも不透明だ。

 環境負荷の少ない次世代燃料として期待が高まるのは当然だが、導入の掛け声が先行した格好で積み残された課題は多い。

 京都議定書で定められた二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標達成に向け、バイオ燃料は有望な柱の一つとなる。政府は一〇年度に自動車燃料などに年五十万キロリットル分を導入する計画だ。  

ところが、気がかりなのは主導権をめぐって省庁間の足並みがばらばらなことだ。  石油業界が採用した「ETBE方式」は経産省も後押ししている。

この方式は欧州で一般的だが、エタノールの比率を上げるには限界がある。これに対し、環境省はもう一つの方式の、エタノールを直接混ぜる「E3方式」を推進している。これは米国などで主流だ。  

環境省はこの「E3」燃料を八月から大阪府などで販売する実証事業を手がける。しかし石油業界が協力を拒否しており、ガソリンの調達先は決まっていない。さらに、農業振興に役立てたい農林水産省は「三〇年までに六百万キロリットルの国産バイオエタノール生産」という構想に意欲を見せている。

 こんな足の引っ張り合いや思惑の相違がある限りスムーズな導入はおぼつかない。省庁の壁を超えた取り組みを求めたい。  まず今回の試験販売を検証・公開し本格導入に生かす必要がある。サトウキビなどだけでなく樹木や稲わらなどを活用する技術開発や、税制優遇策の検討も課題としたい。  

世界的にも市場は拡大しそうだ。米ブッシュ政権や欧州連合はガソリン消費量削減に向けバイオ燃料拡大を打ち出し、温暖化対策に取り組む姿勢を明確にしている。

 一方で、燃料への関心の高まりが穀物国際市場に悪影響を及ぼしている。エタノールのCO2削減効果の検証も重要だろう。国際的な視野から長期的な戦略を立てて臨む必要がある。

2007年05月01日(火)付 愛媛新聞

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