2007年5月7日月曜日

健康への害はガソリンと大差ないエタノール燃料

エタノールは環境に優しい、クリーンな自動車燃料として推奨され、日本でも輸入製品が出回り始めたが、手放しで歓迎とはいかないようだ。同製品の広範囲での使用が、将来的に呼吸器疾患による死亡や入院の増加を招くことが、科学誌「Environmental Science & Technology」4月18日オンライン版に掲載された米国の研究で指摘されている。
米スタンフォード大学(カリフォルニア州)大気科学者のマーク・Z.ヤコブソン氏らは、大気状況をミュレーションするコンピュータモデルを用いて、エタノール85%とガソリン15%を混合したE85燃料の車が広範囲で使用された場合の、2020年時点での米国の大気状況を検討。
 研究では、E85の使用により、大気中の発癌(がん)物質であるベンゼンとブタジエンは減少する一方で、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドは増加。その結果、E85による発癌率はガソリンと同じであることが示された。 また、スモッグの主成分であるオゾンは、南西部では減少するものの、ロサンゼルスと米北東部で著明に増加することが確認された。それに伴い、オゾン関連の死亡件数は、ガソリンに比べ年間約200件の割合で増え、うち約120件がロサンゼルスで発生すると推計された。
 これらの大気状況に起因する疾患による死亡率は、2020年には、ガソリン車に比べ全米で約4%、ロサンゼルスでは9%、それぞれ増加すると予測している。また、E85は、ぜんそく関連の救急室搬送および入院数を大幅に増加させることも示された。

 エタノールの有害性はトウモロコシ、スイッチグラスなど原料を問わない。ヤコブソン氏は、エタノールはガソリン燃料による汚染と同じくらい有害であるにもかかわらず、なぜバイオ燃料を推奨するのか疑問を投げかけている。米国でのガソリン汚染による早期死亡は毎年約1万件に達している。
 ヤコブソン氏は、「風力や太陽光の転換エネルギーで走る電気自動車、プラグインハイブリッド車、液体水素燃料電池車などは、毒性物質やグリーンハウスガスの排出は実質的にゼロで、土地への悪影響もほとんどない。エタノールの原料のトウモロコシやスイッチグラスを大量に生産するには広大な土地を耕す必要がある」とも指摘している。
(HealthDay News 4月18日)

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