石油業界は先月から植物を原料とするバイオエタノールを配合した「バイオガソリン」の販売を首都圏50カ所で始めた。2年間の試験販売で安全性などを確認し、段階的に販売量を拡大。2010年度から九州を含め全国で展開する。バイオガソリンは地球温暖化対策の切り札と期待される半面、原料の安定確保や価格見通しなど供給面での課題も少なくない。
植物は生育過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、バイオエタノールを燃やしても、大気中のCO2の総量は不変‐。
この「カーボンニュートラル」という考えから、生物由来のバイオ燃料は、温暖化防止に向けた京都議定書でも「温室効果ガスを排出しないエネルギー」とされている。政府は10年度に原油換算で50万キロリットル分をバイオ燃料に代替する方針を掲げている。
これに沿って石油業界は、業界割り当ての21万キロリットル分(エタノール換算では36万キロリットル)の代替を目指し、10年度にはガソリン販売量の2割をバイオガソリンに置き換える計画だ。
■製造法で対立
ただ、関係省庁の足並みはそろっていない。今回、石油業界が取り入れたのはバイオエタノールと石油系ガスを合成した液体燃料「ETBE」をレギュラーガソリンに混入する方式。これに対し、米国などでは、ガソリンにバイオエタノールをそのまま混ぜる直接混合方式が取られている。
エタノールは水と混じりやすく、取り扱い過程で雨水などが混入すると品質が劣化し、自動車の素材などを腐食させる恐れがある。それを防ぐため、石油業界はETBE方式を採用した。
しかし、ETBEは余分なコストがかかり、混合割合にも限界があるため消費量を大幅に増やすのは難しいともいわれている。バイオ燃料の普及拡大を図る環境省は直接混合方式を主張し、ETBEを後押しする経済産業省と対立している。
一方、バイオエタノールの原料作物増産を期待する農水省は、現状で年30キロリットルにすぎない国産バイオエタノールを「30年度までに600万キロリットル」に引き上げる大増産計画を掲げている。
■「国産」が理想
バイオガソリンは試験販売中はレギュラーガソリンと同価格で供給されるが、バイオエタノールの輸入価格はガソリンより1リットル当たり30‐40円高い。普及拡大に向けコスト削減のほかバイオエタノールの安定調達という課題も横たわる。
バイオエタノールの原料はトウモロコシやサトウキビなどが主で、日本の供給力は乏しい。海外でもバイオエタノールの輸出余力があるのはブラジルだけ。さらには、バイオエタノール需要を背景に近年、世界の穀物相場は上昇している。
「無資源国のバイオエネルギーは『国産国消』が望ましい」。こう主張する石油連盟の渡文明会長は、理想型として草木や廃材などを原料とする生産を挙げる。それでも低コスト生産など実用化へのハードルは高い。
こうした面からも、バイオエタノールは「夢のエネルギー」とは言い難い。過度に期待するより、市民にできる効果的な環境対策として、アイドリングストップや公共交通の利用など地道な省エネがなお求められる。
(東京報道部・久永健志)=2007/05/05付 西日本新聞朝刊=
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